蛙狩神事

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蛙狩神事

かわずがりしんじ

元旦の朝、諏訪大社上社本宮では、蛙狩りと呼ばれる神事が行われる。
これは、諏訪大社のすぐ横に流れる川に棲む蛙を掘り起こし、矢で串刺しにしてお供えとするもの。
諏訪大社は全国的にも珍しい狩猟の神で、この蛙狩だけでなく4月15日に行われる御頭祭で鹿の頭を奉げることでも知られている。

蛙狩神事

朝8時前、社殿から篳篥など古来の楽器の演奏が聞こえ、数名の神職と氏子達が社地に並ぶ。
初詣客と出初式の消防団がたむろする中、神事の参加者たちは神楽殿のすぐ横にある池で祝詞をあげ、歳旦祭が始まった。。
神職は白い装束、氏子は裃を着て、蛙を生け捕りにする2名の人が参加していた。
この季節の諏訪は、長野県でももっとも寒い場所のひとつで、氷点下になることも珍しくない。
そのためか、二人が装束の下にジャージを着ていたので、厳かな神事とはいえ、少しおかしかった。

蛙狩神事

池への祝詞が終わると、いよいよ社殿へ入り、諏訪大社の祭神に祝詞を上げる。
篳篥の音が流れる中、古式に乗っ取って神事が進む。
今回の主役は、とにかく蛙を捕まえる二人だと思い、ずっと二人に注目をしていたのだけれど、その間、社殿にも入らずに幣拝殿の前で手持ち無沙汰で立っている様子が印象的だった。

蛙狩神事

蛙狩神事

蛙狩神事

蛙狩神事

果物や魚、酒などが供えられるといよいよ蛙狩りへ。
神職と氏子が見守る中、二人が御手洗川に入り、持っている鍬のような道具で川の中を探る。
さほど水量が多いわけでもなく、木の葉の間で冬眠している蛙を見つける。
たくさんの見物人、そのほとんどがカメラマンで地元のケーブルテレビと思われる一行や、アマチュアの大きなカメラを持つ人。
狙いのポイントは共通しているようで、川の一箇所に固まっていた。

蛙狩神事

蛙狩神事

川の中から2匹の蛙が見つかると、宮司の持つ三方上の上に載せられ、無事、蛙狩りの前半は終了。
蛙の姿を見ることはできなかったが、両手で覆うことができるほどの大きさの蛙が社殿へ運ばれていった。
意外と静かで地味な気もしたが、一年の豊穣を願う神事なので、きっと捕獲する方は真剣なのだろうと思う。
捕らえられた蛙は、幣拝殿で篠竹の矢で射抜かれ、諏訪大社への供物になる。

蛙狩神事

蛙狩神事

その昔は、神事のあとにこれを肴に酒宴が行われることもあったようだけれども、きっと今はそういったこともないのだろうと思う。
たった2匹の蛙だけれど、大地からの恵みとして、人の願いを込めて土地の神様へ供えられるというのは、この地域の文化として興味深いものだった。
環境の変化で、もしかしたら2匹の蛙すら棲めなくなる未来がくるかもしれないと思うと、昔ながらの儀式が続けられることと、それを守ることの大切さを考えさせられる。

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