苗村神社
なえむらじんじゃ
滋賀県蒲生郡竜王町大字綾戸467
滋賀県竜王町にある苗村神社は、紀元前29〜西暦70年の垂仁天皇の時代に創建されたという。
亡くなった先祖が子孫にとって影響があるという祖霊信仰から始まったとされている。
近郷33ヶ村に氏子をもつ総社で延喜式にも記載がある。
県道を挟んで社地が広がり、深い社叢に囲まれた東本社と明るく開けた西本社がある。
もともとは東本社が本殿として祀られていたところに、奈良県の金峯山から国狭槌命が鎮座し西本社が作られたという。
駐車場は西本社側にあるため、東本社へは県道を渡って鳥居を潜る。
両側を背の高い木々が覆い、そのなかを参道が延びていく。
灯籠を両側に見ながら50mほどで東本社が建っている前に出た。
東本社の前には狛犬と灯籠が一列に並び、社殿の両側には小さな祠が並んでいた。
社殿の正面には格子戸となっており、少し内部へ入ったところには板扉が作られているという。
正面に向かって右側の壁面にも板扉があり赤く塗られており、左側の白い壁とは対照的になっている。
西本社に並んで建つ八幡社との共通点として、この板扉の通し材として母屋の実肘木を用いている。
ほか妻飾りの扠首組頂に花肘木が入っている点などがあるという。
県道を挟んだ西側にある西本社には入母屋造りの楼門が設けられている。
建てられた年代の詳しくは不明とされているが、蟇股や斗栱などから応永ごろに造られたと考えられている。
上層の扉や連子窓に古い様式が見られ、軒尾垂木の先端を斜めに造って大きな反りを着けている点に禅宗様が見られる。
下層には縦横に貫が組まれ壁が無く、斗栱の間にある小壁までも開放されている。
さらに中央には扇が無い形式での楼門は珍しい。
西本社は棟札から1308年に建てられたと考えられている。
三間社流造で前面は一段高い床張り、菱格子を入れることで前室を作っている。
向拝は一間で屋根は檜皮葺き、正面にはふたつの蟇股は透かし彫りを施されている。
本殿の中には厨子が収められ、本殿とともに国宝に指定されている。
西本社の西側にある八幡社は東本社や楼門と同年代に建てられたと考えられている。
一間社流造で屋根は檜皮葺き、東本社と同様に側面には板扉が設けられている。
八幡社と同じように西本社と並ぶ十禅寺社は、山王二十一社の上七社のうち十禅寺の分霊社。
一間社流造で檜皮葺き、装飾のない社殿で正面は幣軸板扉、側面と背面は板壁となっている。
社殿を囲う瑞垣の門には、参拝者を見下ろすように子守猿と厄除猿が置かれている。
国宝と重要文化財を持つ神社でありながら、社地は静かで趣のある神社だった。