塩野神社
しおのじんじゃ
上田市前山1681
塩野神社は上田市前山に建ち、独鈷山に奥社を持つ神社である。
前山は前山寺三重塔に代表されるように、非常に文化的な建築物の目立つ地域で、近いところでは別所温泉の安楽寺三重塔がある。
塩野神社は延喜式に名があり、本殿の彫刻、勅使殿とも呼ばれている拝殿の建築様式が非常に特徴がある。
社地に入ると、上諏訪社、下諏訪社などの摂社が見られる。
杉の立派な社叢に囲まれ、木々の隙間からの木漏れ日に照らされる様子はとても印象深い。
社務所前の三の鳥居を潜ると塩野川に架かる太鼓橋を渡る。
太鼓橋を渡ると、正面に楼造の拝殿が見られる。
この一間社の楼造の拝殿は、勅使殿とも呼ばれ、神社ではあまり見られない珍しい建築となっている。
一般的に拝殿を含め本殿などの社殿というと、1階建てであるのに対し、塩野神社の拝殿には1回の天井部分に回廊が設置され、さらにその上に窓が付けられている。
コンクリートが打設された基礎部分に束を建て、素木造の社殿は、薄暗い社叢の中に重い雰囲気を漂わせながら奇抜な建築を見せてくれる。
特に目立つ彫刻が施されている社殿ではないが、軒下に設けられている組物が見事である。
突き出した肘木と二重に施された垂木に目を惹かれる。
拝殿の後ろに控える本殿は一間社流造。
形式的には拝殿の楼造に比べ、一般的なものとなっているが、この本殿の特徴といえばなんといってもとても細やかに施された彫刻である。
頭貫に地紋彫を施し、妻の虹梁には雲の文様彫刻が施されている。
妻面には天女が彫り込まれ、その深い眼差しは生き生きとして動き出しそうな印象を与える。
朱に塗られた垂木と、三手先の肘木は拝殿のそれと似たように長く突き出し存在感がある。
本殿の脇障子には竹に虎・牡丹に唐獅子、小脇坂には竜、向拝の頭貫虹梁上には波に兎の彫刻が入り、手挾は菊の籠彫とするなど、江戸時代中期の地方の作品としては、彫刻が多用されているもっとも初期の建築様式と言える。
脇障子の上の尾垂木については、竜の彫刻が施され、この竜が脇障子の上の鉢木を飲み込む珍しい意匠になっている。
所在地 | 上田市前山1681 |
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ホームページ | なし |
祭神 | 素盞嗚尊・少名彦命・大己貴命 |
本殿 | 上田市有形文化財 寛延3年(1750)棟札 |
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大工 | 末野忠兵衛 |
建築様式 | 一間社 流造 銅板葺 |
拝殿 | 市指定文化財 寛保3年(1743)棟札 |
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大工 | 末野忠兵衛 |
建築様式 | 一間楼造 切妻造 銅板葺 |